かつて、「ギャグ王」というエニックスの少年誌があったのをご存知でしょうか。
1994年創刊、「ドラゴンクエスト 4コママンガ劇場」などで活躍した漫画家を中心とした月刊誌でしたが、1999年に休刊になってしまいました。
当時中学生だった自分は創刊号から購入していましたが、連載のなかで一番楽しみにしていたのは、「殺し屋ジョージ」という4コマ漫画でした。
この作品には、殺し屋だけど全く殺し屋らしくない、主人公のジョージや・・・
何がしたいのかさっぱり分からない忍者うさぎなど・・・
基本的に若干イラッとくるキャラクターがたくさん登場します。
絵のクオリティも、まあ、中学生でも頑張ればマネできそうな感じでした。
では、何がこの作品の魅力なのか。
実は、この「殺し屋ジョージ」には、他の追随を許さない、圧倒的に魅力的なキャラクターが登場していました。
そのキャラクターとは・・・
長パンダ。
この単行本の表紙の後ろにいる、一反もめんみたいな、胴が長いパンダです。
正しくはハリガネパンダと言うそうですが、胴長パンダまたは長パンダの愛称でファンの間では親しまれていました。
「殺し屋ジョージ」の4コマには、たまにこの長パンダが登場する話があり、それが何とも言えず好きで、この作品を愛読していました。
長パンダの魅力
この長パンダ、ギー!と鳴くのみで、いっさい喋りません。
そして、特徴は、とにかく胴が長いこと。
たったそれだけのキャラクターなのですが、この長パンダが登場する話は、何ともいえないシュールな味わいがありました。
「殺し屋ジョージ」全2巻のうち、長パンダは何度も登場しますが、まず、胴が長すぎて日常生活に支障をきたす系のネタが頻繁にあります。
世間に溶け込もう、普通の背丈の仲間と同じように暮らしたい、という長パンダの切実な願いは、その長すぎる胴により、いつも打ち砕かれてしまいます。
- (左)かっこいいボーダーのシャツを買ったが、胴が長すぎて丈が足りず、最終的に自らの胴をボーダーに染めてしまう長パンダ
- (右)傘を差しても、レインコートを着ても、胴が長すぎて結局ずぶ濡れになる長パンダ
長パンダはとても友達思いであり、友達のために長い胴を少しでも役立てようとしますが、多くの場合は残念な感じで失敗します。
- (左)友達のため、長い胴を生かして橋になろうとするも、長さが足りずそのまま崖下に墜落していく長パンダ
- (右)友達のため、長い胴を生かしてシーソーになろうとするも、頭を強打してそのまま意識を失う長パンダ
- (左)ミノムシの巣に入った友人を揺らしてあげる長パンダ
- (右)友人のため、長い胴をくねらせて蛇使い遊びをしてあげるも、サッカーに完全敗北してしまう長パンダ
さらに、(胴が)短いふりをして実はメチャクチャ長いというろくろ首的なネタや、気に入らない相手に長い胴を生かして反撃するネタなども定番です。
- (左)長い胴を折り畳んでカワイイ赤ちゃんに偽装し、食べ物をもらうタイミングで正体を現して長くなる長パンダ
- (右)長い胴を伸ばして、去っていく意地悪な天女を追う長パンダ
以上、少しでも長パンダの魅力が伝わりましたでしょうか。
え、伝わってない?
まあいいや・・・。
作者の梶原あや先生
この「殺し屋ジョージ」の作者で、長パンダの生みの親は、梶原あやさんという漫画家です(公式ホームページはこちら)。
「殺し屋ジョージ」の連載時には高知大学の学生だったようですね。
1999年の「ギャグ王」廃刊後も、エニックス系の雑誌などで活動を続け、直近は「まんがくらぶオリジナル」で「もしもしぐま」という漫画を描いていたようです。
※まんがくらぶオリジナルは2014年に休刊
また、とんかつパフェで有名な、「清まる」というとんかつ屋のイラストも手掛けられているようです。
2011年には「梶原あや作品集」(上・下巻)が発売されました。
初期作品の「殺し屋ジョージ」「ちゅうちゅうパトロール」「けんけん猫間軒」が収録されています。
なお、「けんけん猫間軒」には、長パンダは出てきませんが、長パンダが短くなった見た目の店長パンダというキャラが出てきます。
【新品】梶原あや作品集_ 全巻セット (上下巻 全巻)/梶原 あや/復刊ドットコム
梶原あや先生が生んだ傑作キャラクター、長パンダ。
周りに話しても誰ひとり知らないので、もしご存じの方がいれば、この記事をみて少しでもニヤリとして下さったら嬉しいです。