漫画「かってにシロクマ」の最終話は何だったのか

子供の頃、私が人生で初めて買ってもらったマンガは、「かってにシロクマ」という作品でした。

かってにシロクマとは

本記事をご覧になっている時点で、すでに「かってにシロクマ」についてある程度はご存知だとは思いますが、以下の動物キャラたちが繰り広げる日常系ギャグ漫画です。

  • 真っ白い突然変異のクマ(アルビノ)である「シロ」。
  • シロの弟である「大ちゃん」。
  • シロと大ちゃんの母親である「お母さん」。
  • シロ達に母親を食べられた子供イノシシの「うり坊」。

かってにシロクマ 動物生態図鑑 6【電子書籍】[ 相原コージ ]

アホだけど時々は男らしいシロ、優等生だけど臆病な大ちゃん、豪快な肝っ玉お母さん、若干シュールだけど可愛らしいうり坊。

1980年代の作品ですが、いま読んでも十分に面白いギャグ漫画です。

下ネタが少なからずありますが、小学生低学年だった当時の私は、それが下ネタであることすら分からず楽しく読んでいました。

オリジナルのコミックスは全6巻ですが、作者である相原コージのデビュー35周年に合わせて復刊のためのクラウドファンディングが行われ、現在は全3巻のSPECIAL EDITIONが発売されています。

【在庫あり/即出荷可】【新品】かってにシロクマ SPECIAL EDITION (1-3巻 全巻) 全巻セット

意外にシリアス展開もあり

この「かってにシロクマ」、基本的にはギャグ漫画なのですが、たまに「えっ?」と思わせるシリアス展開があります。

以下では、印象的なシリアス展開をご紹介します。

シロに彼女ができるエピソード

シロに彼女ができます。ちょしちゃんという名前のヤマネです。

初め、シロは全く相手にされませんが、ちょしちゃんの親友であるモモンガのももちゃんの助けも借りて、種というかサイズの壁を越えて、シロとちょしちゃんは相思相愛の仲になります。

シロとちょしちゃん

しかし、ある日、ちょしちゃんは突然姿を消してしまいます

散々探し回って途方に暮れるシロ。そこに(シロの)お母さんが声をかけてきます。

ふと見ると、お母さんの頭に、ちょしちゃんにプレゼントしたはずの花が乗っているではありませんか。

なんと、シロの彼女がヤマネであることを知らなかったお母さんが、ちょしちゃんを捕まえて食べてしまったのでした。

うり坊があの世に行くエピソード

シロと大ちゃんが生まれて以来、ずっと留守にしていたお父さんが突然帰ってきます。

お母さんは大喜び。しばらく家族4匹+うり坊で、幸せな時間を過ごします。

しかし、気まぐれで浮気性なお父さんは、ある日、何も告げずにいなくなってしまいます。

落ち込むお母さんを元気づけるため、シロ・大ちゃん・うり坊は、お父さんが山のテッペンにあると言っていた「素晴らしいもの」を取りに行く旅に出ます。

しかし、山では様々なトラブルがシロ達を待ち受けていました。

ある日、豪雨に見舞われて洞穴に避難したところ、土砂崩れが起きてしまい、シロ達は洞穴の中に閉じ込められてしまいました。

洞穴の中に水が入ってきたため、急いで出口を掘るシロ達ですが、出口が外に開通した際、うり坊が濁流に流されて崖下に転落してしまいます。

雨が止んだ後、シロ達が崖下を探すと、そこには動かなくなったうり坊が・・・

一方、うり坊(の魂)が目を覚ますと、そこは「この世」と「あの世」との境目でした。

死んだ母親や兄弟達に呼ばれ、三途の川を渡りかけるうり坊。

しかし、川を渡り切る寸前でちょしちゃんが現れ、まだこちらに来るには早いと止められます。

うり坊は、母親や兄弟達に後ろ髪を引かれつつも、現世に戻ることを決め、間一髪のところで生き返ります。

なお、お父さんが言っていた「素晴らしいもの」とは、「交尾したままのクマの化石」でした。

シロ達が巣立つエピソード

キツネに噛まれたお母さん。

やけに怒りっぽくなり、暴力的になるなど、様子がおかしくなってしまいます。

物知りのももちゃんに相談したところ、それは狂犬病ではないかというアドバイスをもらったため、懸命に治療を試みるシロ達。

シロ達の懸命の看病で、一旦はお母さんは治ったかと思われました。しかし、ある朝、再び発狂してしまいます。

身の危険を感じたため、泣く泣く、 お母さんの元を離れるシロ・大ちゃん・うり坊。

しかし、これは全て、お母さんの演技でした。

大人になる年齢を迎えたシロ達を巣立たせるため、お母さんはワザとおかしくなったフリをしていたのです

後でこっそり様子を見に行ったシロだけが、この事実を知ります。シロは泣きながら立ち去り、強く生きることを誓うのでした。

このエピソードは非常に感動的で、ここで終わればキレイだったのだと思うのですが、その後に数ページ、付け足しのような謎の最終話があります

謎の最終話

お母さんの元を離れ、3匹で暮らすシロ・大ちゃん・うり坊。

しかし、食料も寝る場所もなく、3匹はいざこざばかりを起こしてしまいます。

ある日、他のクマの縄張りから逃げる途中、うり坊が川に流されてしまいます。

うり坊を探しに行こうと言うシロ。

ここで大ちゃんが、先程の他のクマからの罵声を思い出し、「お兄ちゃんが白いのって、そんなに変なのかな・・・」と呟いてしまいます。

「白いのが変」という言葉は、シロにとっては、子熊の頃からの耐え難いトラウマでした。

その場から走り去ってしまうシロ。

一方で、背後の茂みに獰猛そうなオオカミ?が隠れており、大ちゃんを狙っています。

大ちゃんを狙うオオカミ(?)

この場面を最後に、物語は突如終了してしまいます。

なんとも後味が悪い・・・

「サルまん」と「真・異種格闘大戦」

この、これは落丁なのか?と思わせるほど謎めいた最終話。

ずっとモヤモヤしておりましたが、なんと以下の2作品に、続き(?)が描かれています

サルでも描けるまんが教室(サルまん)

「サルまん」は、相原コージ・竹熊健太郎の共著の、漫画の描き方のハウツー本です。

【中古】サルまん 上—サルでも描けるまんが教室 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)/相原 コージ、竹熊 健太郎

この本の「ウケる動物まんがの描き方」の導入部分に、「新・かってにシロクマ 」と題した漫画が掲載されています。

ただし、1ページのみ(7コマ) 。

時系列的には本編の最終話の直後であり(シロが走り去り、オオカミ?が大ちゃんを狙っている場面)、大ちゃんが叫び声を上げて、シロが振り向くシーンが描かれています。

一方、川に流されたうり坊が目を覚ますと、原発のような施設?の近くで、動物達が倒れているコマがあります。

副題が「§ 1 突然変異」とあるので、大ちゃんを狙っていたオオカミ?は、放射能で突然変異した野生動物なのかもしれません

真・異種格闘大戦

こちらは「漫画アクション」などで2004年~2011年に連載されていた作品で、全10巻。

「地上最強の生物」を決定するため16種の動物がトーナメント戦を行うという、一風変わった格闘漫画です。

参加する動物は、ライオン・マウンテンゴリラ・トラ・インドサイ・カバ・アフリカゾウ・ヒクイドリ・アナコンダ・クズリ・オオカミ・ナイルワニ・シマウマ・イヌ・ヒグマ・スイギュウ・ヒト。

※ ストーリー上、途中参加する動物もいます

上の動物達がトーナメントを戦っていくわけですが、途中、アフリカゾウとクマが対戦する話があります。

その話のみ、ここでネタバレしてみたいと思います。

収録巻は4巻になります(49話~57話) 。

真・異種格闘大戦【地上最強の生物は誰だ】 4巻【電子書籍】[ 相原コージ ]

トーナメントの第7試合、アフリカゾウ・クマの両者が、お互い闘いのリングに入場します。

クマの名前は「レタンデビル」。傷だらけのムキムキの身体で、凶悪な顔をしています。

観客の一人が「あんな白いクマいるかよ、変だよ!」と野次ったところ、レタンデビルはその観客をいきなり殺してしまいました

これはもしや?と読者は思いますが、クマの選手紹介では、アラスカ出身・食肉目クマ科・ハイイログマ(グリズリー)と紹介されます。

「かってにシロクマ」のシロや大ちゃんは、エゾヒグマでしたよね。

試合が始まり、レタンデビルは様々な戦いのテクニックを駆使しますが、相手のアフリカゾウはライオンと並ぶ優勝候補。全く歯が立ちません。

「野生の戦いでは、汚い手を使おうが勝った者が偉い」などと言い、レフェリーの鳥を人質ならぬ鳥質に取ってギブアップを迫りますが、アフリカゾウの機転で、それも破られてしまいます。

突進してくるアフリカゾウ。

追い詰められたレタンデビルが取った行動は・・・

わたしは木!!!

有名なシロの持ちネタ(?)です。「かってにシロクマ」のファンなら、涙なしには見られないシーン。

やはり、レタンデビルの正体は「かってにシロクマ」のシロでした。

※「レタンデビル」=「レタン」(アイヌ語の「白い」に由来)+「デビル」(英語)であり、シロは北海道からカムチャツカ半島を経て、英語圏のアラスカに渡ったそうです

・・・

ボロボロになり、瀕死になってもギブアップしないシロ。

仕方なく、アフリカゾウがトドメをさそうとすると、観客席から待ったがかかります

「もうやめて、お兄ちゃん」

見ると、そこには茶色いクマと、イノシシが!!!

「お前 大なのか?」

・・・なんと、

大人になった大ちゃんとうり坊が登場しました。

2匹は、このまま戦い続けたら死ぬので、もうギブアップしろと言います。

対して、シロは、負けたらおしまいなんだと答えます。

シロは、その身体の白さのため理不尽な目に遭い続け、負けたらおしまいだ、負けたら全てを失う、勝たなきゃダメだ、という強迫観念に囚われていたのでした。

しかし、大ちゃんはそれを否定。

死んだらおしまいなんだよと、冷静に言い返します。

弟の言葉が心に響き、シロはついにギブアップを宣言

いい弟を持ったな、とアフリカゾウから声をかけられるシロ。大ちゃんに背負われ、コロシアムを後にします。

ちなみに、大ちゃんは父親似の眉が太い中年クマになっていましたが、衝撃的なのは成長したうり坊

いかついオッサン顔になり、可愛かったうり坊の面影が全くないばかりか、「シロどん、もう勝ち目はないでごわす」など、 西郷隆盛ばりの鹿児島弁で喋ります。

・・・

コロシアムからの帰り道、シロは大ちゃんに背負われながら、子熊の頃の思い出話をします。

俺の熊生(ジンセイ)、どこで間違えたんだろ、と言うシロに対して・・・

熊生(ジンセイ)に間違いなんてないんだよ・・・

大、お前、大人になったなあ、とシロは涙を流します。

やがて、大ちゃんの家族のところにたどり着きますが、出迎えた大ちゃんの子供達の中に、シロそっくりのアルビノがいます。

顔どころか、「お?お?」と、喋り方まで同じです。

名前もお兄ちゃんと一緒で「シロ」って名付けたんだよ、と大ちゃんが振り返ったところ、背中のシロは、すでに生き絶えていました・・・

シロの身体は、アフリカゾウとの戦いで腸の一部が飛び出していましたが、「ぴゃー」と言いながらそれに巻きついて遊ぶ二代目シロ。

シロの死に顔は、心なしか微笑んでいるようにみえました。

おわりに

以上が、「サルまん」と「真・異種格闘大戦」で描かれた内容です。

これを正式な続編と取るか、パラレルワールドと取るかは人それぞれでしょうが、個人的に、後者の「真・異種格闘大戦」の結末は感無量でした。

ずっと自分の中で未完だった「かってにシロクマ」という名作が、ついに完結してしまった気がします

この「真・異種格闘大戦」 は、全編のストーリーもとても面白いですが、「かってにシロクマ」のファンの方は、上でご紹介したレタンデビルの話だけでも読んで頂きたいです

※DMMブックスのサイトTOPから「異種格闘大戦」で検索、「無料サンプル」ボタンの下の「1~4巻を見る」から進み、4巻の「無料サンプル」を選択すると、アフリカゾウとの戦い直前まで立ち読みできます



スポンサーリンク