「芝浜の革財布」という落語の演目を聞く機会があったので、あらすじを簡単にご紹介します。
「芝浜の革財布」あらすじ
あるところに魚屋さんがいました。
しかし、この魚屋、全然働きません。
昼から酒を飲むことを覚えてしまい、一日中ぐうたらしています。
奥さんに「ルート営業してきなよ!」と言われますが、「いや、最近は外回りしてないし、もうお客さんは他の魚屋に取られてるだろ・・・」などと、営業マン失格なコメントをしています。
とある朝。
魚屋は奥さんにたたき起こされ、しぶしぶ魚市場に仕入れに向かいます。
しかし、市場はまだ空いていませんでした。
「ちくしょう、あいつ、時間を間違えて叩き起こしやがった」など、ブツブツぼやきながら、近くの芝浜でボンヤリ海を眺める魚屋。
「しょっぺえ~」とか言いながら、海水で顔を洗ったりして、時間をつぶします。
そのとき・・・
ふと見ると、革の財布が落ちているではありませんか。
おそるおそる中身を確認してみる魚屋。
すると、なんと50両くらい入っています。
こちらの日本銀行の貨幣博物館のFAQによると、1両は江戸初期で10万円、中~後期で5万円、幕末で1万円弱くらいだとか。江戸初期なら500万円ですね。
魚屋、家に飛んで帰ります。
「え?もう帰ってきたの?」と怪訝そうに出迎えた奥さんに、「大金を拾った!やったあーー!!」と大興奮。
さっそく近所の仲間を呼んで、大宴会を開催する魚屋。
そして、そのまま泥酔して寝てしまいます。
・・・
酔いから目覚めた魚屋。
宴会の支払いをしようと、例の革財布はどこいった?と奥さんに尋ねます。
「えっ?革財布??あんた、一体、何を言っているの???」と奥さん。
なんと、芝浜で革財布を拾ったのは、魚屋の夢だったようです。
しかし、大宴会をしたのは現実で、単なる大出費になってしまいました。
ショックを受けた魚屋。
こんなことをしていてはダメだと、ついに心を入れ替えます。
魚屋、この日から禁酒を始め、真面目に働くことを誓います。
それから、3年の月日が流れ、年の瀬の大晦日。
魚屋は、過去3年コツコツ働いたのが実を結び、自分の店を持てるまでに成功していました。もともとやればできる男だったのですね。
身重となった奥さんが話しかけてきます。
「ちょっと私の話を聞いてくれない?」
え、改まって何だい、と魚屋。
「私の話を聞き終わったら、私のことを殴るなり蹴るなりしてくれていいよ。但し、出ていけとだけは言わないでね。」
またまたぁ!そんなこと言うかよ~と返す魚屋の前に、奥さんが差し出したのは、どこかで見覚えのある革財布。
「これを覚えているかい?」
聞くと、芝浜で革財布を拾ったのは夢の中での出来事だと言ったが、実は現実の出来事だった、とのこと。
奥さんは、あの時の魚屋が大金を手にしていたら、酒と遊びで浪費してしまうだろうから、一計を案じ、拾ったのは夢だとウソをついたのでした。
なお、奥さんは大家さんに相談のうえ、革財布を役所に届け出ていました。落とし主は結局見つからず、革財布は合法的に魚屋達のものになったとのこと。
おそるおそる、魚屋の顔色を伺う奥さん。
すると・・・
魚屋は優しく奥さんの手を握りました。
「ありがとう。そんなの、怒るわけないだろう。」
あの時の自分であれば、大金を手に入れたら、きっとダメになっていた。
また、落とし物の財布に入った金に手を付けていたら、下手したら打ち首になっていた。
歯止めになってくれてありがとう。今の自分があるのはお前のお陰だ・・・
魚屋は、奥さんに感謝の気持ちを述べます。
「今日くらい、酒を解禁するかい」と奥さん。
「そうだなあ・・・」と言いながら、魚屋がお酒をそっと両手で持つシーンで、物語は終わります。
・・・
夫婦の心温まるエピソードでした。
なお、オチに関しては、色々とアレンジがあるそうです。
酒を飲むとまた夢オチだったら困るから禁酒を続けるバージョンや、このウソつきが!と奥さんにキレるバージョンもあるそうですが、キレたら物語が台無しですよね。
おまけ・芝浜の場所
この芝浜、東京都港区芝として現在も地名として残っていますが、東京は埋め立てが進み、海岸線は江戸時代とは大きく異なっています。
なお、山手線・JR田町駅の近くにある御穂鹿嶋神社(みほかしまじんじゃ)という神社に、芝浜の石碑が立っており、その名残を見ることができるそうです。
御穂鹿嶋神社(みほかしまじんじゃ)の場所はこちら。
この作品はラストシーンが大晦日であることから、年末に演じられることが多いとか。
今回はたまたま講談で聞きましたが、落語でも聞いてみたいです。